「温故創新」210910 N875 伊波喜一

富士の山 雲海の上 頭出し 頂上白く 初めての雪     

 朝の空気がヒンヤリとしている。歩いても汗をかかず、爽やかである。これからの季節は、ウォーキングに最適だ。草花も衣替えをするので、ぶらぶら歩きが楽しい。

 通勤途中に見かける柴犬が、今朝も介助の手を借りながら、2階から下りてきた。1段1段、足元を確かめるように下りてくる。

 ベビーカーを改造したようなキャリアカーに乗り、これから散歩に行く様子だ。老夫婦の日課であるようで、柴犬に話しかけながらキャリアカーを押してゆく。

 そうしてもらうことに何の戸惑いも見せず、柴犬は大人しくなすがままにされている。安心しきっている様子に(大事にされているんだなあ)と、心が温まる。

 7日、富士に初冠雪が降りた。昨年より21日早く、雪が降った。河口湖付近では雨が観測されていたが、富士山頂では雪になった模様だ。標高3775mにある観測点は、6日午後11時に氷点下5.8℃まで冷え込んだ。

 同気象台の初観測は1894年で、その死闘は新田次郎の小説「芙蓉の人」に詳しい。地味で脚光を浴びない観測日誌だが、遠く明治から令和まで、営々と続けられていることに感嘆する。

 名は体を表すという。富士山を別名「芙蓉峯」と呼ぶが、芙蓉の花には「変化しやすい」「繊細の美」という意味が込められている。