「温故創新」220106 N986伊波喜一

普段見る 光景変わり 刺激受け 定点観測 時間を変えて      

 朝から寒気が堪える。久方ぶりに、東京も雪が降りそうな気配である。指先を温めるために、カイロを握って自転車をこぐ。

 西武線久米川駅で、人身事故があった。その影響でほぼ1時間、西武柳沢駅で電車が止まった。

 いつもは7時過ぎに通過するので、車外はまだ薄暗い。目を凝らしていると、駅に急ぐ人達がコートやダウンで身を覆っている。ホームで電車を待っている人達は、そのほとんどがスマホを見ている。1~2割程度の人達は、所在無げにポケットに手を突っ込んでいる。 

 車内の筆者にとっては、英単語を覚える時間が長く取れた。同じ姿勢で立っていると血流が悪くなるので、軽く屈伸したり腰を曲げたりして待っていた。

 8時に電車が動き始めると、街並みの様子が見えてきた。駅に向かってなだらかに路が下っていて、駅前の商店街通りには提灯の列が点いている。白熱灯の光は、温もりを感じる。冬の日は早く暮れるので、灯の明かりに癒されることだろう。

 時折、家が取り壊されて空き地になっていたり、一際群を抜く公共物が建っていたりした。普段意識することがなかったが、街も人も変わってきている。

 時には時間を変えて、定点を覗いてみるのもいいものである。人の意識は、このような日常の些細な変化から起こるのかも知れない。