「温故創新」211105 N931 伊波喜一

足元の 知恵から学ぶ 生物の 時代の先端 バイオメティクス           

 府中・神大寺植物公園に向かって、東八道路を車で走る。イチョウ並木が続いている。黄色や薄茶色、橙など、紅葉が美しい。

 同じ所に植えてあるのに、色づき方がそれぞれ異なる。散歩しながら見上げても美しいし、遠目に眺めても美しい。物言わぬ木々だが、1本1本に個性がある。自然の妙と言うべきであろう。

 生物の優れた構造や機能をまねるバイオメティクス(生物模倣技術)による、製品開発が広がっている。

 食中植物にヒントを得て、表面に雪などが付着せず滑り落ちるコーティング剤などがそれだ。

 例えばウツボカズラの壺内面は、潤滑液に覆われている。この技術を活かし、寒冷地の屋根の積雪解消に役立てることが出来る。

 豪雪地帯では屋根の雪下ろしが、死活問題となる。その雪下ろしの労が減れば、生活の負担が軽減されるのみか、雪国での暮らし方に大きな影響を与える。

 そのほかにも、稲の葉で作られる古来の雨具「みの」を、参考にした例もある。稲の葉には撥水の構造がある。これをコートに転用し、雨や雪やほこりが付きにくいものに仕立てた。 

 変遷を経て生き残った自然の知恵は、人智の助けとなる。科学と化学に自然の知恵を取り入れたならば、人の生活はヒトに優しいものとなる。それが暮らしやすいということでは、ないだろうか。