「温故創新」221018 N1126 伊波喜一

支え合う 生命の不思議 関係を「縁起」の思想 相互扶助かと              

 朝から小雨混じりである。一雨ごとに、季節は冬へと近づいてゆく。そろそろ、熱い飲み物や厚手の上着が必要となる頃だ。

 アメリカのイエローストーン国立公園で、過酷な環境で生きるイネ科の植物が見つかった。この公園にある温泉が噴き出す周辺の地熱は、65℃にも達する。65℃といえば、タンパク質が変質する。卵の中身は液状から個体へと変わり、ゆで卵独特の匂いがするようになる。本来なら、植物は生きてゆけない。

 ところが、その植物に共生する糸状菌が耐熱性を与える。さらに、糸状菌を活性化させるウイルスが共生している。これは、生物と無生物との共生である。

 植物の祖先は、海にいたプランクトンのような存在であったと言われている。菌根菌という糸状菌と共生することで、約5億年前に陸上で生活できるようになったと考えられている。

 植物が地中深く張る根には、菌根菌や細菌といった微生物が共生している。植物の成長に必要な窒素やリンといった無機栄養物を渡す。逆に植物は光合成で得た栄養分を微生物に渡すことで、細菌と共生的に生きている。このような共生関係をみていくと、人類の知恵は微生物から学ぶことが多いのではないかとも思えてくる。

「縁起」とは、互いに関係していることをいう。共生である。そう考えると、人が互いに争うことの愚に気づかざるをえまい。