「温故創新」230409 N1203伊波喜一

1年の 時の早さに 驚きて 義父の遺影の 微笑み変わらず

 暖かいと思いきや、沖縄の朝晩は寒い。念のためにフリースを持っていったが、正解だった。義父が90歳で亡くなって、丸1年となる。

ついこの前のような気がするが、歳月の歩みは意外なほど早い。

 大工だった父はせっかちで気が短く、ぐずぐずするのを嫌った。文字通り、腕一本で家族を食べさせてきた。学歴にも親にも頼れず、裸一貫から叩き上げてきただけに、躾けや身ごなしに口うるさかった。

 自身が苦労しただけに、子ども達に同じ轍を踏ませないとしたのだろう。しかし、反抗期を迎えた子ども達には、ただただ口うるさく感じられた。義父に面と向かって反抗しても敵わないので、聞いたふりや無視をした。

 その子ども達がいざ社会に出てみると、義父の指摘してきたことが身をもって実感できた。仕事の段取りは勿論のこと、使う人の立場になって丁寧に仕上げる。当たり前の事を当たり前にやることが、どれだけ大変なことか身に沁みた。義父は子ども達が将来困らないようにと、敢えて口うるさく躾けたのだ。

 後年、子ども達も子育てをしてみて、義父の指摘がどれほど的確だったか納得させられた。かつて叱られたことを、むしろ誇りに思った。 

 元来、子煩悩で子ども好きな義父の遺影は、笑顔を見せている。その笑顔の奥に、どれほどの情愛が籠っていたことか。改めて、その恩の深さを感じるとともに、恩に報いていきたいと思う。