「温故創新」230125 N1165伊波喜一

木の中に 生命力を 満々と 春に備えて 芽吹く準備を

 最大級の寒波が、全国を襲っている。大雪で交通が遮断され、事故が多発している。小平でも明け方、マイナス3度を記録した。

 ある染色家が桜色を取り出そうと桜の花を茹でたが、目指す色にはならなかった。試行錯誤を重ねるうちに、木の幹の皮をはいで茹でてみた。すると、見事な桜色が出たという。桜の面白さと同時に、幹に潜在する生命力に舌を巻く。

 古語にも「桜は不思議なる木。うちに桜の花を秘めぬ」とある。あれだけ多くの花を咲かせ、実を生らせる。幹に蓄えられたエネルギーが、桜色に滲み出る。

 去年の暮れに、サクランボを剪定してもらった。庭師曰く「このサクランボもそうだが、幹が艶々しているのは健康な証拠。幹の表面に張りがあるから、花も実も咲く。その元気の源は、根っこ。根っこが土中深く張りめぐらされているから、丈夫な幹になる。見えないけれど、根っこが元気であれば木は長く持つ」。

 そして「剪定で大事なのは、陽光を枝や幹に浴びせること。花芽のついた枝を残しながら、枝と枝が互いに邪魔しないよう伐る」と。

 今、サクランボは全ての葉が落ちて、枯れ枝のようにしか見えない。しかしよく見ると、枝分かれしたあちこちに花芽がちょこんと付いている。この花芽が少しずつ膨らみ、花開かせる時がやってくる。

  全生命力を傾けて、一気に花開かせる春がもうすぐやってくる。