「温故創新」211230 N980 伊波喜一

どこ切るか 枝の伸び先 見極めて 花芽残して さり気なくかな   

 多摩の朝は寒い。ここ小平でも零度を切り、フロントガラスが凍っている。陽が出てしばらくして、やっと暖かさが感じられる。北国はさぞ、寒かろう。

 1年ぶりに、植木の剪定をしてもらった。サクランボも楓も、枝が暴れ気味になっている。素人考えだと、枝分かれしているところから、バッサリと切りたいところだ。

 ところが、そのやり方だと、肝心の樹勢がなくなる恐れがある。枝がどの方向へ伸びようとしているのか。それを見極めたうえで、ぶつかり合っている枝を除く。

 それが分かりづらい時にはバサッと切り落とさず、半分程残す。翌年まで様子を見ながら、時間をかけて切るのがいい。枝の伸びようとする方向を阻む枝を落とすだけで、見違えるほど枝ぶりが映える。

 コニファーなど葉の密集している木は、とにかく枝を梳いて風をいれてやる。風通しが良くなると、枝ぶりが生き生きとしてくる。葉の色つやも、格段に良くなる。

 すいすいと切っているように見えるが、実に理に適った切り方だと感心する。やはり専門家のアドバイスは無理がなく、肩に力が入らない。だから、仕上がりもごつごつせず滑らかだ。

 技や芸は、一日二日で身につくものではない。このような職人技が途絶えず継承されてゆくことを、心から祈りたい。