「温故創新」230119 N1159 伊波喜一

親が子に 子が我が親に 手を下す 社会の歪 弱きものへと

 悲しい事件が続いている。母親が7歳の子に手をかけたり、12歳の子が母親を包丁で刺し殺す事件が報じられている。

 それぞれに責任能力の有無をめぐって精神鑑定が行われ、入所の措置が取られていく。入所から更生までの経緯や経過が、今後の大きな焦点になろう。

 今、世の中は大きく動いている。能力主義による自己責任論が大手を振る中で、その能力を身につける機会に恵まれなかった子どもや家庭は、社会の隅に追いやられざるを得ない。

 例えば、認知されずに片親家庭で育ち、頼れる親戚や友人がなかったとしたらどうだろう。十分な教育を受けさせるどころか、食事や睡眠でさえ満足に与えられない。

 その子たちの預かり先として児相や保護所、児童自立支援施設や少年院があるが、受け入れには施設や人員面から限界がある。

 本来ならば長期的に時間と人手を割かなければならないが、今、そこまでの手立てを取るのは極めて難しい。しかし、これらの子ども達が矯正するには、時間がかかる。いきおい、人手も予算もかかる。

 社会全体で救護のあり方や構造そのものを変えていかなくては、子ども達に寄り添った支援は、到底できない。

 これは、個々の職員の自助努力で何とかなるものではない。制度を変え、予算と人の配置をすることこそ、政治の役割であろう。