「温故創新」200814 N509 伊波喜一

原発の 核燃料の 輸入ゼロ 方向転換 利益に抗い   

 通勤途中の路地の木陰に、小犬が腹ばいになっている。腹を冷やしているらしく、飼い主が首輪を引っ張るが、てこでも動こうとしない。

 この暑さで、犬も散歩どころではないのだろう。股関節をペタッと広げ、地面にへばりついていた。

 原発の核燃料となるウランの輸入が、2019年度にはほぼゼロになった。輸入を開始した1960年以降で初めてである。

 その背景には、東電福島第一原発事故後の新規制基準で国内の核燃料製造工場が止まり、再稼働原発が少ないのが挙げられる。 

 天然ウラン鉱石は精錬、濃縮といった加工を経て核燃料になる。国内には良い鉱床がないため、海外から濃縮ウランや天然ウランを輸入している。

 84年には最高額の2804億円となったが、福島原発事故後の16年には29億円となった。そして19年は、4500万円だった。これも実験用に使われただけである。 

 20世紀は科学が世界を席巻した。

 人は自然界の頂点に立ち、理性と理屈、合理と合法で全てをコントロールすることが出来ると信じた。 結果はどうだっただろう? 

 私達は目に見えない宇宙の法則に守られて、生き延びている。そこには、人智の及ばない領域がある。謙虚にそれを受け止めていくことを、原発は黙示しているかのようだ。