「温故創新」191202 N354 伊波喜一

なだらかな 芝生の丘に 平屋根が 返還決まり 人の気なくて 

 国道330号線沿いを車で走っていると、返還の決まった米軍住宅がフェンス越しに見える。しばらく刈り込んでいないのだろう、伸びた芝生のなだらかな傾斜が続き、コンクリートの平屋がゆったりと並んでいる。自然の傾斜を巧みに生かしていて、いつ見ても美しい。このロケーションを壊さずに取り入れて、開発していけると素晴らしい。 スクラップ&ビルドで、これまでの開発は行われてきた。コンセプトは大きく・高く・多くである。広い敷地に高層建てで、より多くの人を集約する。これは色んな意味で効率がよいと、考えられてきた。しかし、ヒトの遺伝子には、適度な空間と密集を好み、平原に憧れる習性が残されている。樹林から地上に降り立った人類の祖先達は、広大な地上をおののきと同時に好奇の目で、歩き通したに違いない。 グローバル化することは、幸せでも何でもないことに、気づき始めたヒト。虚実ないまぜにした情報に踊らされ、気づいたら足元をすくわれていたでは、勿体ない。自分の眼で見て確かめ、汗を流して歩いた体感ほど強いものはない。周りに左右されず、自身の心の声を聴きとることが、必要ではないだろうか。