「温故創新」191130 N353 伊波喜一

それぞれの 違いに目向け 伸ばすかな 僅かな機会 捉えて活かす

 環境が先か遺伝が先かは、議論の分かれるところである。人は環境に左右されるが、環境を乗り越えるのもまた人である。これは、筆者がコスタリカで聞いた話である。 Aさんは小学校5年生の時に、家族でドミニカ共和国に移民した。第二次世界大戦後の混乱の中、海外からの帰還者で人口が増えすぎることを憂慮した日本政府は、1956~59年にかけて海外への移民政策をとった。Aさんの家族はその移住に応募した1319人の日本人だ。しかし、実際に連れて行かれたのは、岩だらけ塩害だらけの土地で、およそ作物が実る肥沃な土地ではなかった。結局約8割がドミニカを去り、Aさん一家もコスタリカに移住した。 コスタリカの言語はスペイン語のため、当初は言葉が分からず授業についていけなかったが、努力の甲斐あってスペイン語に精通し、やがて日本企業の現地法人に就職する。 飄々とした中に要点を落とさず、柔軟な対応をするAさん。相手の気持ちを汲みつつも気持ちに流され過ぎず、判断を見誤らない。Aさんと接していると、逆境を乗り越える力と同時に、地頭の良さと柔らかさを感じた。 環境か遺伝かを判ずるのは難しい。