「温故創新」240627 N1458伊波喜一

施すは 情けは人の ためならず 与える喜び 色褪せずにと       

 朝、家の周りを掃いていると、蝉の抜け殻が転がっている。箒の先に殻がくっついて、まるで生きているかのようだ。柿の木や楠で大合唱している蝉たちが、それぞれに脱ぎ捨てたものかもしれない。 

 世界幸福度ランキングで、日本は変わらず第51位だった。これはG7の中で最下位である。この要因の1つに、日本は幸福を感じる感性が麻痺していることが挙げられる。

 ユダヤの格言のように、水と安全はただではない。落とし物や忘れ物が無事に戻ってくる国は、当たり前ではない。政府批判や政党批判をしても、拘束されたり監禁されたりすることはない。

 また、誰もが勉強することが出来、進学することが出来る。世界を見渡せば、児童労働搾取が頑として残り続けている。国民皆保険制度と年金制度で、健康と老後に一定程度の安心感も持てる。 

 もう1つの要因は、他者と比較する文化であることだ。絶対評価でなく、相対評価で自身の立ち位置を決めがちである。そのため、回りの状況に振り回され、常に他者の目を意識することとなる。

 このような受け身的の価値観を改め、自らが与え手となると心象風景が一変する。人は受け手であるより与え手になった方が、物事に敏感に反応する。そして与え手になると、日常の出来事により感謝の気持ちを持つようになる。

 利他の心がけは、色褪せることのない財となるのだ。