「温故創新」220102 N983伊波喜一

幸福の 軌道離れて 何かせん 人のためには 我が身に返りて         

 昨夜は風が出て、今朝は一段と寒い。今日から2日間競われる箱根駅伝は、寒さとの勝負でもある。選手達が体調を崩さず完走することを、切に祈りたい。

 今年も、北国から渡り鳥がやってくる。彼等は航路を案内する計器も持たずに、何千キロを一糸乱れず正確に飛んでくる。生きのびるための知恵を最大限に働かせ、その軌道から外れることがない。

 飛行機も同様に、広い大空を自由に飛んでいるように見える。実際には、航空路を正確に飛んでいる。だから、航空機と航空機の接触や衝突が起こらない。

 人の生き方も、航路とよく似ている。若い頃は自分の力を信じて、遮二無二進んでいく。人の力を借りず、貸すこともせず、己を信じて進む。しかし、人生の大波とはどこで遭遇するか分からない。その時になって初めて、自らの限界を知る。

 ひもじい時に、人は一人で貪り食おうとする。どころか、他者のを奪ってでも貪ろうとする。人がこれまで生きのびて来られたのは、少量でも他者と分かち合ってきたからだ。強い生命力を発揮しながら、それを他者と共有していく。

 オミクロン株の急速な拡大で、個人も社会も内向き志向になっている。その壁を打ち払って他者と関わるところに、幸せの軌道が始まるのではないだろうか。