「温故創新」231130 N1335 伊波喜一

話し手に 時代の流れ 脚光が 聞いてほしいと 心の奥で          

 明日から師走。光陰の早さに驚く。東北は大雪に見舞われている。

 コミュニケーションというと、どうしても「話し上手」の印象が強い。ニュース解説などで理路整然と淀みなく、かつ堂々と自信を持って話しているのを聞くと、それだけで圧倒される。圧倒的な説明力に納得したように思うが、案外そうではない。

 例えば、セールストークの場合、買い手に買ってもらうために、売り手は懸命に商品の特性や利点を説明する。商品の特徴を全て説明し尽くし、いかにコレが優れているか説得に努める。スキなく漏れなく立て板に水で、完璧である。

 その説明を聞いた買い手がすぐに買うかというと、そんなことはない。買い手は頭の中で、新製品と今使っているものとを比較している。そして使い勝手の良し悪しなど、関連付けて聞いてみたいと思っている。今度は、買い手が話し手へと入れ替わるのだ。この買い手の心の声を聞き取れるかどうかで、商品が売れるかが決まる。

 このことは、より良い人間関係を作る上でも同じである。コミュニケーションの基本は、話し手1に対して聞き手2の割合が望ましいと言われる。こちらが1つ話をしたら、相手の話を2つ聞く。自らの言説に溺れることなく、相手の心の内なる声を聞くことに専念する。この聞き上手な人こそが、コミュニケーションの達人と呼ばれる。

 言うは易いが、行うのはなかなかに難しいと実感している。