「温故創新」 211026 N921 伊波喜一

感情を 声に託して 表現を 吹き替えよりも 字幕好みて      

 ピシャピシャと窓を叩く音で、目が覚めた。

 床に就く前は小雨だったので、一瞬、家の中に雨が入ってきたかと思ったほどだ。小一時間ほど本を読んで、寝入り直した。

 朝方はまだ雨が残っていたが、9時をまわる頃には晴れ間が覗き、暖かくなってきた。眞子さまが皇室を離れる日の前途を、陽光も応援しているかのようだ。 

 映画字幕翻訳者の戸田奈津子氏が、面白い記事を載せている。

「外国映画が、これほど多く字幕で公開されてきた国は珍しい。外国語の映画は、吹き替えで観るのが世界の主流」であるそうだ。

 なぜ日本では、字幕が広がっているのか。1つには識字率の高さがある。もう1つは、俳優本人の声を聞きたいという欲求が強いからだ。

 1つ目の識字率の高さは、大いに関係する。国民全体が新聞やネットを読み、話し言葉ではなく文字言葉で理解できる国は珍しい。

 もう1つは、本物に触れたいという願望である。俳優たちの声が全て、美声とは限らない。発音も滑らかとは限らない。

 だが、その俳優のその声を聞くと、なぜか心惹かれる。それは、わずか1行のセリフに込めた思いが、観客に届くからだ。

 声はダイレクトに心に届き、聞くものの気持ちを揺さぶる。そのために彼等は心血を注ぎ、声を磨く。 

 心の思いを言葉に託せる声の響きは、天からの授かりものであろう。