老練の 大物政治家 去りゆくか 米中国交 引き合わせゆく
今日より師走。激動のこの年の点描を、丁寧に行ってゆかねばだ。
米国と中国の国交正常化に大きく寄与した、ヘンリー・キッシンジャー元米国務長官が亡くなった。享年100歳。
72年、日本の頭越しにニクソン大統領が訪中し、「1つの中国政策」を表明した。それまで米国の後追いをし、台湾と外国関係を継続してきた日本は、蚊帳の外に置かれた。
73年には南ベトナムからの撤退を合意させ、泥沼化したベトナム戦争の終結を舞台裏で取り仕切った。さらに同年、エジプトなどアラブ側とイスラエルとの第4次中東戦争が勃発すると、関係各国を行き来する「シャトル外交」で、停戦に漕ぎつけた。
キッシンジャー氏ほど、パワーポリティックスを体現した政治家はいないだろう。徹底したリアリストで、軍事・経済・政治の全てにおいて、米国の圧倒的な力を見せつけた。その根底には、15歳でナチスドイツの迫害から故国ドイツを逃れ、米国へ亡命してきたことが原風景としてあったのだろう。
氏にとって、第3次世界大戦は絶対に避け無くてはならないことだった。だから、世界の警察として目を光らせ、突出した勢力を生み出させないようにした。氏が手塩にかけて育ててきたその中国が、このように覇権化するとは思いもしなかったに違いない。
氏亡き後の国際政治が、これ以上泥沼化しないことを祈りたい。