「温故創新」230306 N1189 伊波喜一

争いの 言葉の奥に 込められた 心開いて 対話続けん

 昨夜から降り続いた雨が、地面を濡らしている。庭のサクランボが一つ、芽吹いている。昨晩の冷え込みで、冬眠から覚めたのかも知れない。

 横浜・鶴見で、ロシア語講師をしている人の話。小2の不登校をきっかけに引きこもり、高校は通信制高校に入学した。何気なく聞こえてきたラジオのロシア語の響きに、魅せられてしまった。

 日本語にはない深い響き。くぐもった発音が、余韻として残る。(なんてきれいな言葉だろう)。そこから一念発起して大学に入り、さらに交換留学生としてロシアの地で過ごす。

 しかし、現実は平坦な道ではなかった。初めての海外生活の上に、寮生活。厚い言葉の壁に慣れない人間関係が重なり、ホームシックにかかる。 そんな中、学食のおばさんが会話のコツを教えてくれる。「相手の目を見て、ゆっくり喋ればいいんだよ」と。

 寮生たちは、あちこちに連れて行ってくれた。親しくなればなるほど、ロシア人の心の温かさにふれることが出来た。『果てしなく続く地平線のように、ロシア人の心も広々としている』。その思いが、彼をロシアと日本とをつなぐ通訳として活躍させた。

 ロシアの侵攻で、通訳としてのアイデンティーが揺るいだ。だが、それがロシア人の全てではない。一個人としてロシア人アは心優しい。だから、ロシアとの友好を続けていきたいと決意しているとのことだ。