「温故創新」220120 N994伊波喜一

寒風に ペダル漕ぎ漕ぎ 耳痛し 大寒の朝 月が真西に         

 朝もやの中、畑の土がシャーベットのように白くなっている。ところどころ、薄く霜が降りている。2枚重ねの手袋と耳当てをし、帽子を被りマフラーを首に巻く。それでも、寒気で体が縮こまる。

 今日は大寒小寒から節分までが「寒の内」である。大寒はその中間にあたり、1年で最も寒さが厳しいとされる。これから2月中は、空気が凍てつく。

 特に夜間から午前中は、冷え込みが激しい。体が硬く、動きも鈍くなるので、転んだりと思わぬ怪我をしてしまいがちだ。十分に体を温めてから、動き始めることにしよう。

 午前8時過ぎ、中野坂上の歩道に1台の手押し車が停まる。路上生活者と思われる人が車を停め、花壇の手すりに腰を下ろす。

 それからおもむろに新聞を広げ、10分ほど読んでいる。急ぎ足で行き交う人が、その前を通り過ぎていく。皆忙しげで、注視するものは1人としていない。

 寒空の下、この路上生活者は一体どこで暮らしているのだろうか。連絡の取れる身内はいるのか、仲間はいるのか、何を食べているのか。そして、病気になったらどうするのか。

 頼れるものがなくなれば、社会は不安定化する。競争原理にばかり目がいき、社会的弱者が切り捨てられる社会は冷たい。

 政治の向ける眼は人を離れてはないことを、強く思う。