「温故創新」221105 N1133 伊波喜一

首里城の 復元待たん 起工式 気遣行列 古式尊重               

 朝もやの中、道路にカラスが2羽、降り立っている。餌になりそうなものは見当たらないが、せっせと地面を啄ばんでいる。これから寒さが厳しくなるが、自然界の理は極めて厳しいものである。

 首里城の復元工事が、本格的に始まる。首里城琉球王国の政治や文化の中心だった。過去にも、消失と再建を繰り返してきた。

 戦後、沖縄が米軍統治下から日本に復帰して、20年の年に正殿が復元された。ところが、2019年10月31日未明の火災で、正殿や南殿・番所など6棟約4千平方㍍が全焼した。今回の復元工事は、復帰50年に合わせて本格的に始める。

 起工式に先立ち、工事の無事を祈り、御材木を納める「気遣行列」も行われ、多くの住民や観光客が見守った。トレーラーで運ばれてきた御材木は、長さ9㍍、直径1㍍、重さ約4㌧の大木である。

 約80㌔離れた本島北部の国頭村で切り出されたのは、樹齢98年のオキナワウラジロガシである。王国時代の首里城の一部にも、使われたとされている。

 限りある貴重な資源を使って復元することは、後世に歴史の重みを残す使命がある。前回は防災設備が整っていなかったため、大火災となってしまった。

 二度と失火を起こさないよう最大限の点検をするのは元より、文化財の保護のあり方を国で検討してゆく必要があるだろう。