「温故創新」211220 N976 伊波喜一

外界の 刺激に敏に 反応し 体毛失い 歩行始まる   

 朝の公園はまだ薄暗く、人気がない。下水道の水が外気で冷やされ、マンホールから湯気が上がっている。北国では寒波が厳しい。被害が心配である。

 二本足歩行をするようになった人類の祖先が、体毛を失ったのは120万年前の事と考えられている。以来、この肌感覚を通して周りの状況を的確に掴んできた。

 樹林から草原に降り立った人類が直面したのは、外敵から身を守ることだった。そのためには、周囲の危険を素早く察知しなければならない。

 特に力の強い動物から身を守るには、弱いものや小さいものを大人がその身で守らなければならない。その触れ合いの中で、互いの気持ちが通じ合っていった。相手の状況を感じ支え合うことで、コミュニケーションが高まり深まる。

 今、アトピー性皮膚炎や食物アレルギー、花粉症などが、物凄く増えている。これは過度な無菌状態を繰り返したことから、人に本来備わっている免疫力が衰えたと言われている。ばい菌を排除することが、かえって抵抗力を奪う結果となっている。

 長い年月を経て獲得した人類の知恵は、過剰な清潔に見られる無菌状態に警告を発しているかのようだ。そしてそれは、現代の過剰な排他主義と重なるように感じている。