「温故創新」200211 N380 伊波喜一

進化する 生き物達の 不思議さよ 人智及ばぬ 世界あるかと 

 先日、福島の被災地で活躍する旧友と話す機会があった。風評被害をはねのけて村々の復興に尽力する姿に、心温まる思いがした。

 登山家を助けるシェルパは、ネパールの高地に住む少数民族である。シェルパの中には、標高8848mのエベレスト山頂に酸素吸入器を使用しないで登った者がある。なぜ、これほどまでに高度順応出来るのか。それは彼等が、EPAS1という遺伝子の変異を受け継いでいるからだ。この遺伝子には、赤血球細胞を普通より少なく生産する働きがある。通常、高地に順応するには、血液中の赤血球を増やさなければならない。これはEPO(エリスロポエチン)というホルモンが分泌され、骨髄にある細胞を刺激して赤血球の細胞を増やすからだ。 だが、このEPOが過剰に出ると血栓を起こしやすくなる。そこで、EPAS1遺伝子は底酸素状態でも長期にわたって安定的に酸素を行き渡らせ、赤血球の過剰生産を起こさないようにしている。 心の奥底に横たわる無意識界の阿頼耶識(あらやしき)には、人類の経験値が宿っている。その可能性を平和裡に活かしていくならば、安心で安全な社会になるのではないだろうか。