「温故創新」200209 N379 伊波喜一

一人勝ち する指導者に 大国の 舵取りできぬ 譲ること也

 穀物の種の品種改良では、害虫に強く、日照りや冷害に強い種の開発と保存が命運を握る。成果を独占した企業が、世界を牛耳る。同様に、情報や軍事、薬剤などの分野でも、世界は一強化している。

 パクス・アメリカーナが崩れ、世界の秩序は今、混沌としている。西洋一辺倒の価値観が崩れ、多様な価値観で溢れかえっている。その中から新秩序を産み出すには、一人勝ち状態では絶対にうまくいかない。相手の国情や宗教的・民族的感情に配慮せず、こちらのやり方を強引に押しつけたのでは、大きな反発を食らう。反発だけでなく敵対感情を持たれる。 ローマは他民族国家だった。他民族国家とは考え方も生き方も違う民族が集まって、どの民族にも利益をもたらす国家のことである。パクス・ロマーナ(ローマの平和)という理念を打ち立て、それに反しない限りは各民族とも自由に統治させた。この緩やかでしなやかな統治のあり方が、ローマを永続させた。理念を明確にした上で、生活法は国家や地域の実情に合わせ、一強の理屈を押しつけない。この柔軟な対応力こそ、これからの世界秩序を築いていく原理となる。一強から互恵主義への転換である。