「温故創新」190812 N296 伊波喜一

おもてなし 何を国是に 進むのか 国土の復興 置き去りにせず

 来年の五輪開催に向けて、新国立競技場の建設が急ピッチで進んでいる。公式ボランティアの募集などソフト面での整備にも余念がない。「震災復興」と「おもてなし」を掲げて招致した五輪だが、今、どれだけあの当時の熱気が残っているかと問われると、忸怩たるものがある。 当時、震災からの復興は、経済的側面から語られていたが、土地に対する愛着とはそういうものではあるまい。自身を育んできた故郷に戻りたくても戻れない、去らざるを得ない現状をどう捉え直すのか。それは福島原発の後処理についても、近年打ち続く集中豪雨や地滑り、噴火による避難地域の復興と建設についても同様である。対処療法的に対応するだけでなく、どのような国家観を持ち、それを国民に提示していくかが必要である。観光立国を目指すのと併せて、国土の有効利用と復興の視点と見通しを明らかにすることが肝心であろう。 日本の水と空気は、世界に冠するものである。この一点主義を守り、次世代へ受け渡すのは容易でない。破壊は一瞬である。連綿と営まれてきたこの国のあり方を振り返り、復興に向けて取捨選択して進んでいく時は今をおいてない。