「温故創新」210706 N809 伊波喜一

がん治療 免疫療法 加わって 医療更新 意識改革                 

 2階の窓の外から、微かに振動音が聞こえてくる。窓を開けて覗いてみると、カラスが電線にぶら下がっていた。鳩やムクドリと違って、カラスは目方が重い。その分、揺れも激しいようだ。 

 がんは、日本人の2人に1人がかかる国民病である。

 これまでのがん治療では、手術による切除、抗がん剤の投与、放射線療法が行われてきた。現在はそこに、免疫療法が加わった。

 抗がん剤では、がんゲノム医療が導入されている。これまではがんの種類で、標準的な治療薬が決まっていた。

 ゲノム医療では一人一人のがんの個性を、遺伝子レベルで明らかにする。そのため、患者により適した治療を行うことが出来る。 

 そもそも、がん細胞は遺伝子のコピーの失敗から生まれる。

 人体では、1日1兆個もの細胞が生まれ変わる。そのうちがん化する異常細胞は、数千個単位で発生していると考えられる。遺伝子変異は怖いことではあるが、変異があったから生命は環境に適応できた。 

 例えば、人の誕生一つとっても、母胎では羊水の中に浮かんでいる。ところが、誕生とともに肺を膨らませて酸素呼吸をする。

 それまでの常識では、考えられないような難事を繰り返しながら、人は環境に適合した。

 生命の深層にある自然治癒力を発揮すれば、医療の効果がより高まることを実感している。