「温故創新」201104 N581 伊波喜一

血液の 原因解明 難病の 治療方法 新たな道が  

 東京は木枯らし1号が吹いている。空気が乾燥していて、ひときわ寒く感じる。インフルエンザの蔓延する時期到来に備え、自己免疫力を上げておきたい。 

 血液の難病「遺伝性再生不良性貧血」の原因の一つが、二つの酵素の遺伝子異常であることを、京都大やケンブリッジ大の研究チームが発表した。 

 遺伝性再生不良性貧血は、子どもの難病である。骨髄で血液をつくる造血幹細胞が減少し、白血球や赤血球、血小板が減る。白血病に進行することが多く、骨髄移植が必要になる。 

 研究チームは再生不良性貧血患者の細胞の提供を受け、全遺伝情報(ゲノム)を解析した。

 その結果、「ADH5」と「ALDH2」の2つの酵素の遺伝子情報によって、体内で作られる毒性のホルムアルデヒドを分解できず、貧血を発症することが分かった。日本人の大半がALDH2の異常を持ち、酒が飲めない体質になる。

 今後、人口多能性幹細胞(iPS細胞)を作り、治療薬の開発を進めていく方針である。これまで難病とされてきたものが、医学・生物学・化学の力を総合して、解明と治療に道を拓く。

 個々の学問が協力して叡智を結集することで、人類の未来へ灯をともす。嬉しい限りである。