「温故創新」201023 N570 伊波喜一

頭頸部 がんの治療に 新手法 iPSの 細胞活かし 

 どんよりとした雨空から、細かい雨が落ちてくる。

 路上を傘を大きく開いた人達が歩いている。赤・青・黄・チェックと、色とりどりの傘を眺めているだけでも楽しい。 

 千葉大理化学研究所は、頭頸部がんの治療にiPS細胞を用いたと発表した。

 頭頸部がんは首や顎、口の中、喉などにできるがんの総称で、がん全体の5%を占める。 

 IPS細胞のがん治療は、国内初である。がん治療には、ナチュラルキラーT細胞(NKT)と呼ばれる免疫細胞を移植した。 

 NKT細胞はがんを攻撃する。さらに、ほかの免疫細胞の働きを高める。ただし、血液中にわずかしかない。 

 そこで治験では健康な人からNKT細胞を取り出し、iPS細胞にして大量に増やす。それを再びNKT細胞に変化させ、がんにつながる血管に注入する。

 約5千万個の細胞を3回に分けて移植する。治験は10人前後の患者に移植し、2年間経過観察を行っていくとのことだ。 

 iPS細胞は、何にでも化けることが出来る。今後、緑内障や心臓弁膜の再生などにも、用途が開かれるだろう。 

 今回気になるのは、治験数の少なさだ。万能細胞のiPSだからこそ、地道で丁寧な確認作業で安全性を追究していきたい。