「温故創新」191001 N326 伊波喜一

 人として 生きる道こそ AIと 人との違い 示すものかな

 パヴァロッティ効果という言葉がある。これはイタリアのオペラ歌手、ルチアーノ・パヴァロッティ以外の歌手のCDが売れない現象のことをいう。超一流の名だたる歌手達の中で、さらなる超一流にのみ人気が集まる。このように、トップのみが名声・賞賛・富・栄誉・栄光の全てを総取りする構図を指す。 グローバリズムによる富の偏りや、AIの席巻による既存の仕事の争奪もこれにあたる。これらの基盤となるテクノロジーの方向には大きく2つある。1つは社会を変化させ、豊かにさせるテクノロジー。もう1つは格差を生み出すテクノロジーである。明るい未来を目指して開発された原発に象徴されるように、20世紀はテクノロジー信仰で進んできた。しかし、突き進んできた結果は果たしてどうだったのか?もはや、人智では制御が難しい局面に達している。 21世紀に端を発するグローバリズムも、また同様である。万人に富を分配するという大義名分で広まったが、人をモノとして扱う思想に、尊厳を感ずる人はあるまい。 世界は今、大きな曲がり角にある。合理だけでは立ちゆかない。非合理の合理を見つめ直す時が、来ているようだ。