「温故創新」231120 N1329 伊波喜一

半世紀 自身の歩み 師と共に 思い出一つ 在りし日浮かび          

 池田先生の創作活動一つとっても、小説、対談、童話、エッセイ、提言、講演と、八面六臂という表現ではとても追いつかない。

 例えば対談集も国内だけでなく、世界の超一流人と対談し触発している。東洋の叡智を根底に、宗教や民族、人種を超えて止揚しているところに桁違いの知性を感じさせる。これらはマクロ的な活動である。

 それだけでも、他の追従を許さないが、先生の卓越した境涯はそこに留まらない。大地を踏みしめるこの足元を、限りなく見つめるところにある。生老病死に直面した一人ひとりに平等に対し、それこそ渾身の力を振り絞って励まし、蘇生させ、笑顔にさせてきた。

 あの東日本大震災で亡くなった方々への励ましでも、「臨終の姿がどうあれ、生前のその人の行為は決して色褪せない。残されたものの祈りで、必ず救われていく」と、渾身のメッセージを寄せた。

 また苦悩のどん底にある人には「希望が無ければ、自ら希望を作るんだ」と励ました。どんな苦境にあっても、自ら希望を創り出し、価値創造していく。このような指導者が、一体どこにあるだろうか。

 世間を見ても、自利に走ることなく利他を優先して生きることは、容易ではない。ましてや若い頃は志を保てても、その姿勢のまま最晩年まで走り続けることが、いかに困難なことか、審判は厳しい。

 利他に徹し、接するものを笑顔にする達人の先生。先生と同時代を生きられたことに、限りない誇りと喜びを感じている。