「温故創新」210217 N670 伊波喜一

安房の地に 800年前 生まれたる 日蓮の声 聞こえぬるかな        

 朝から冷たい風が吹いている。低気圧の影響で、昨夜から大荒れの天気となっている。大きな事故につながらないことを、祈るばかりだ。

 日本文学・文化研究科であるスペインのカルロス・ルビオ博士は、法華経日蓮の御書をスペイン語訳している。

 博士は現代における世界宗教の条件として、2点挙げている。

 1つは「多様な文化への適応性」、2つは「平和・寛容・対話」という要素が含まれていることである。

 最近の米国内や中国、ミャンマーの政情を見ると、この指摘は卓見である。 

 人の人たる所以は、協力して物事を成すところにある。一人ひとりの力はさほどでなくとも、協力して人智を集めることで足跡を残してきた。

 人種や出身国、思想や信条が異なるのが、人である。むしろ、同じであることの方が不自然である。 

 その違いを認めた上で、どう互いの差異を埋めてゆくか。寛容な対話主義が求められる理由がここにある。 

 動乱の鎌倉期で日蓮は、「一切衆生の異の苦を受くるは、悉くこれ日蓮一人が苦なり」と断言した。佐渡流罪を始めとする弾圧に屈せず、国主には対話で諌暁し、在家の老婆には手紙で励ましを送った。 

 一人に焦点を当てた生き方が、今求められているのではなかろうか。