「温故創新」240308 N1403伊波喜一

父逝きて はや3回忌 早足に 春雪残りて 墓参出来ずか  

 降り積もった雪が、雨に打たれている。軟雪でもう溶け始めている。

 父の3回忌の今日、姉と上さんの3人で父の墓参を予定していた。が、今朝方まで降り積もった雪が思った以上に深く、断念した。

 筆まめな父は、筆者の学生時代、毎週のように手紙を送ってきた。社会人になっても隔週、送ってきていた。手元にあるこの手紙は正確な日付が分からないが、平成元年頃と思われれる。

 戦前の軍国主義時代に青春を送った父は、バブル崩壊後の長い不況のトンネルに差しかかる時代の雰囲気を危惧していた。一言すると、一強・上位下達主義である。愚かにも、大手企業に都合の良い派遣社員制度が導入され、官民挙げて自己責任論を支持した。
 その結果、グローバリゼンーションへと傾斜し、弱肉強食が公認されたも同様となった。そのような風潮に、父は統制されていた軍国主義時代の匂いを感じ取ったようだった。

「戦争はあらゆる矛盾を破壊する一手段であり、敗戦が日本に自由をもたらした。だが自由を得るための代償は、あまりにも大きかった。だから、是が非でもこれ(自由)だけは守り抜かなくてはならない」。

 日記にはそう書かれている。勇ましい全体主義や軍靴の響きは、初めは気にも留めないぐらいの静けさで近寄ってくる。足音に気づいた時には、もうがんじがらめにされてしまっている。

 世界の状況は当時より悪くなっている。注視すべき時である。