「温故創新」240114 N1371 伊波喜一

僅差にて 民意の行方 独立へ 台湾総統 親米・頼氏

 朝から風が強い。木々が風に揺れ、木の葉が舞っている。路傍の梅の実は、固い蕾のままである。春の到来を耐え忍んでいるようだ。

 13日、台湾蔡英文総統の後継を決める総統選が行われた。中国の統一を拒む与党・民進党の頼清徳氏が選ばれた。対中融和路線の野党・国民党の侯友誼親北市長や民衆党の柯文哲氏は、僅かに及ばなかった。だが、両者で60%の票を獲得している。

 これまで台湾では、国民党と民進党が交互に総統を務めていった。今回の頼氏の僅差での選ばれ方から、中国に対する台湾の人々の意識を窺い知ることが出来る。

 今回の選挙で、頼氏は中国貿易の低迷や台湾経済の成長に比べて低い賃金の伸びを批判され、若者ら無党派層の票を掴み損ねた。この票が、そのまま民衆党に流れた。

 特に、中国政府による台湾製品の禁輸措置では、1年半前に輸入を制限された高級魚ハタは、民進党が基盤とする南部に山地が広がっている。選挙最終版では一部地域に禁輸が解かれ、その票が国民党に流れていった。これは明らかに、中国による切り崩しである。

 中国は自国への忠誠心という踏み絵を、台湾に仕掛けている。踏み絵を拒否する者には、兵糧攻めで囲い込む。あまりにもあからさまな中国のやり口だが、背に腹は代えられない。牙城を切り崩されてゆく。 

 関係国の協力をいかに取り付けるかに、台湾の今後がかかっている。