「温故創新」230924 N1299伊波喜一

墓仕舞い されず 参る人おらず 無縁墓にぞ 悩み積もれり    

 気温23℃と寒い朝である。上からかけるものが必要である。

 昨年の死者は156万人を超え、過去最高となった。高齢化社会へと変わり、おまけに血縁や地縁が薄れてきた。

 全国には墓地や納骨堂が、88万4千カ所ある。その内、自治体が管理する公営墓地は全体の3.5%で、残りの9割は個人や集落が管理している。厚生労働省の統計によると、無縁墓の撤去は2021年度3309件で、増加の傾向にある。

 墓の維持管理は、明治以降顕著となった。檀家制度の象徴としての葬儀に加えて、墓や塔婆が広まってきた。かつては土葬が一般的で、亡くなったら土に還るのが自然であった。

 筆者の先祖の墓でも、明治・大正・昭和初期までは土葬だった。火葬になったのは、それ以降のことである。

 それでも昭和の時代までのように、地縁や血縁が残っている時代は良かった。しかし今や、生まれた地域に一生住み続けることは、稀である。家族や親族と離れ、国内だけでなく国外にも住む時代である。 

 また、墓参りの難しい斜面や交通の便の悪いところにも、墓は建っている。しかし、高齢者が増えてくると、参ること自体が難しくなる。墓の手入れや管理は、言うに及ばずである。

 今後は墓そのもののあり方も含めて、継承そのものの是非も検討されていかなければならないだろう。