「温故創新」230916 N1291伊波喜一

定員を 確保できずに 道半ば 進学機会 津々浦々に   

 彼岸が近いにもかかわらず、肌を刺すような暑さが続いている。 

 私大が定員割れしている。入学者が定員を充足できない私立大学が、今春初めて半数を超えた。地方の小規模大が特に深刻な状況にある。

 ベースには少子化がある。この30年で、18歳以上の人口は4割以上減った。だが、私大は6割も増加し、地方を中心に定員割れする大学が増えてきた。

 これまで、都市部に通えない学生は、地方の私大に通う以外に選択肢がなかった。

 しかし、3年半に及ぶコロナ下のリモート授業から、対面型の授業に切り替わってきたタイミングで、都市部への回帰が始まった。身近に大手私大の魅力を感じられるようになったのは、影響が大きい。 

 政府は来年、低所得者世帯向けの就学制度の対象から「直近3年度全ての収容定員充足率」が8割未満の大学を、原則外すとした。入学定員充足率が8割を切るのは、全体の26%、155大学にのぼる。これでは大都市と地方の進学機会に格差が出ることは、論を待たない。 

 大学によっては、細分化された学部を看板にしているところもある。時代に合わせるのは決して悪いことではないが、合わせ過ぎると学問探求の面白みが薄れ、学問それ自体の普遍性が損なわれ兼ねない。

 大学はリベラルアーツが復活してきた意味を、改めて考えるべき岐路に立っているのではないだろうか。