「温故創新」220609 N1053 伊波喜一

イメージで 個を上塗りか 一括り 一人一人の 顔を見んとて   

 雨空に南天の実が鮮やかだ。赤といっても朱色のそれは、曇り空によく映える。しばらく天候不順が続くが、出水など大きな災害のないことを祈るばかりである。

 ウクライナの戦線が膠着している。男性の戦士が足りず、戦場では女性も駆り出されている。女性の闘っている姿は、ロシアの男性軍相手に奮闘している印象を与える。

 また、女性兵士のソフトな印象は、軍事力の行使であることへの警戒感を薄めさせる。あわせて、子どもや家族への情愛を示す映像は、広い層に共感を生み出す。その結果、義援金や募金などが集まりやすくなる。さらに、学校や病院、住宅や公共施設に対する砲撃は、市井の人々の平穏無事な営みを破壊し、路頭に迷わせる。

 中でも子どもや妊婦などへの攻撃は、ロシアの非人道性を全世界の民衆の感情に訴える結果となっている。だから、女性兵士の台頭は自然の理である、とする論が目立つ。

 第二次大戦中の「銃後の母」など、女性を一括りする言葉が溢れていた。ここには、戦争に協力して日本国を守る母、国のためには子どもの犠牲を厭わない母などの、ステレオタイプが見え隠れする。母という言葉のレッテル化である。

 言葉の多義性は、ワンパーターンに括れるものではない。この多様性こそ、戦争への道を食い止める方法ではなかろうか。