「温故創新」230625 N1227 伊波喜一

団結に 自界本逆 亀裂起き 噴き出す矛盾 混迷深まる 

 ロシアで内輪もめが始まった。民間軍事会社ワグネル創始者のブリゴジン氏が、プーチン大統領の指示に異を唱え、モスクワへと兵を進めた。反乱は一日で終わったが、クレムリンに与えた動揺は大きい。

 ブリゴジンはプーチンの盟友で、非合法のワグネルに絶大な権限を与えてきた。刑務所にまで勧誘の手を延ばし、刑期短縮や恩赦などの条件と引き換えに、ウクライナの前線に兵士として送り込んだ。

 これまでに、ワグネルのウクライナ民間人への拷問や虐待などが指摘されている。国際刑事裁判所は、ワグネルの関与を指摘している。 

 大統領の私兵のワグネルが反乱したのは、国防省との確執による。バフムトの肉弾戦で戦果を挙げたワグネルに対し、十分な成果を挙げられなかった国防省が、ワグネルを疎んじた。さらに、ワグネルの民兵契約を国防省との契約に切り替えて、軍の指揮下に置いた。

 国防省としては『庇を貸して母屋を取られる』ことにならないよう、ワグネルを切り捨てる機会を巧妙に作り出したとも言えよう。

 侵略は私利である。私利私欲で団結した輩は、自己の不利益に敏感である。互いの利益に執着して相手の功績を認めらず、挙句に分裂する。餓鬼界と畜生界を右往左往する動きは、滑稽に見える。

 『奢れるものは久しからず』である。人の不幸の上に築いた幸せは束の間の幻想に過ぎない。ロシアが今後どの方向に舵を切るのか、注視したい。