「温故創新」220311 N1013伊波喜一

父の意志 受け継ぐ使命 自らに 後継の道 拓かんかなと 

 庭のサクランボが色づき始めた。3月上旬とは思えない暖かさで、この分では一気に花開きそうである。

 今日で東日本大震災から、丸11年目となる。環境整備が着々と整えられているが、心の復興にはまだ時間がかかる。

 喪失感を埋めるには、思い出の品や人との関わりと向き合わなくてはならない。しかしそれを成すには、勇気がいる。厳しい現実から目を逸らさず、歩み寄っていかなくてはならない。この営みほど、苦しく辛いものはない。それでも、向き合うことが必要だ。

 不慮の出来事や突然の別れに直面すると、誰しもその現実を受けとめられない。思考がまとまらず、心が乱れる。その折り合いをつけるには、それこそ時間がかかる。飛び散ったジグソーパズルを元の形に埋め合わせるように、丁寧に1枚1枚をつき合わせなければならない。 

 それは口で言うほど、生易しいものではない。しかし、現実から目を逸らしても、否定しても何も解決しない。何も生まれない。

 現実を直視するには時間がかかる。が、先ず1歩踏み出す。そこからしか、レジリエンスは生まれてこない。

 父の葬儀は、簡素だが心温まるものだった。何気ない日常での父との思い出を語る参会者の一言一言に、癒される思いがした。この現実を受けとめるには、まだまだ時間がかかる。

 死を通して父が伝えたかったことを、丁寧になぞってゆきたい。