「温故創新」211212 N968 伊波喜一

年老いた 義父の見舞いに 義母連れて 寂しさ堪えて 自宅思うか 

 うるま市の介護老人保健施設に、義父を見舞う。

 義母を連れ、上さんと3人で出かけた。義父の好きな乳酸飲料と、ピーナツ黒砂糖を持つ。

 コロナ感染がまた出てきているので、部屋を訪れることは出来ない。15分間だけエントランスに出てもらい、話をする。コロナ下でお盆に帰省できなかったので、1年ぶりに顔を見せることが出来た。

 長期の車いす生活は、廃用症候群を伴う。義父も3度の食事は欠かさないが、痩せ細っていた。

 ホームの方針で、差し入れの食べ物を本人に直接食べさせることが出来ない。職員に預けたのが、心残りだった。

 大工だった義父は、義母の協力を得て自宅を建てた。子育ても孫の世話も、自宅で行ってきた。

 車いす生活になってその自宅で介護が出来なくなり、ホームに世話になっている。共同生活は相応に気を使う上に、大なり小なり窮屈を伴う。さぞかし自宅に戻って、自分のペースで過ごしたいことだろう。

ただ、それが言えない状況だということも、十分察している。

 面会が終わり、車いすで部屋に戻っていくまでに5回立ち止まって振り返った。迷いを断ち切ろうとしたのか、最後に手を振ったら、振り返ることなく部屋に向かって行った。

 義父の胸中にこだまするのは、何だったのだろうか。