「温故創新」200727 N495 伊波喜一

喧嘩して 得るものあると 誰思う 平和の誓い 忘れてなるか     

 米国と中国の報復合戦が止まない。

 米国がテキサス州の中国総領事館を閉鎖したかと思えば、中国は成都の米国総領事館を閉鎖する。

 一方、南沙諸島近辺では、米空母の演習が2度にわたって行われた。対して、中国は西沙諸島海域で戦闘機の軍事訓練を行った。 

 これには、南シナ海の覇権問題で苦しめられているフィリピンやベトナムも、米国に加担しているように見える。しかし、事はそれほど単純ではない。 

 今年上半期、ASEANはドルベースでEUを抜き、最大の貿易国になった。この背景には、コロナが欧米で猛威を振るい、ASEANが供給源になったことがある。米国の中国に対する半導体輸出規制でも、ASEANが肩代わりした。

 その他にも、中国の労働コストが上がり、その分ASEANに工場を移転する動きが加速している。 

 このような現状からして、米国の恫喝外交で中国が屈するとは先ず思えない。さらに、政治の次元と比べ経済を交流し成果を出すまでには、とてつもない時間と金と人の熱意が必要となる。これは、経済制裁の考え方の対極にある。 

 力づくの外交では誰もなびかない。相手の立場に立ち誠意をもって話し合い、尊重する姿勢こそ、今求められている。