「温故創新」200213 N382 伊波喜一

厳しさの 言葉の奥に 心あり 人を育てる 苦楽共にし

 野球評論家で著述家の野村克也氏が逝去した。選手として三冠王を始め通算打席数1位、監督としても最多の1053勝と3回の日本一優勝に輝くなど、大記録を打ち立てた。にもかかわらず、辛辣だが軽妙な語り口と、さっぱりした性格に情の深さが相まって、何とも味のある人だった。 座右の銘「勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし」は、勝負師としての本質を言い得ている。負け試合には必ず原因がある。それを明らかにして対処しなければ、敗北することを理論と実践で証明した。 人材育成法では「褒めて・貶(けな)して・無視して」育てることを実証した。褒められて有頂天になるようでは三流。貶されてムッときたり落ち込んだりするようでは二流。無視されても、自分のやるべきことをやるのが一流の証。その指導法で、実に多くの選手を後継者に育て上げた。 

 また野村再生工場の通り、力を出し切れずにいた選手に的確なアドバイスを与え、復活させた。派手さはないものの、堅実で地に足が着いた指導は後世の鏡である。 最後に野村の好きな言葉。「財を残すは下、仕事を残すは中、人を残すは上」。 実に味わい深い。