「温故創新」220324 N1018伊波喜一

改革の 狼煙上げるか こつこつと 声なき声を 挙げ続けんと     

 年度末を迎えて、あちこちで道路工事が行われている。日中掘り返して工事をし、夜間、元に戻す。こうすることで、より日常に近い生活を送れるようにする。それにしても、手間暇かかるだろうにと同情の念を禁じ得ない。

 この年度末には、補正予算も組まれる。ロシアのウクライナ侵攻に伴って、原油や小麦などの原材料が高騰している。建築資材も高騰し、販売価格を一気に押し上げている。

 経済の良好な循環でインフレが起きるのは、望ましい。それによって給料も上がり、購買意欲に直結する。しかし、侵略などの一方的な要因で物価が高騰するのは、望ましくない。破壊は生産性を押し下げ、物不足になる。

 つまりインフレになった分、所得の価値は下がる。これが低所得者や高齢者の暮らしを、直撃する。なぜなら、衣食住の維持費は削れないからだ。この現状に対して予算を組み、最低限度の生活を守るのは政治の役割である。 

 昨日、岸総理と公明の山口代表との会談が行われ、生活を守る視点で補正予算の具申が俎上にのぼった。生活者の視点で、具体策を打ち出していかなくては、国民が疲弊する。

 改革の狼煙は、打ち上げ花火のように盛大でなくともよい。地道にこつこつと声を上げ続けることこそ、政治の原点であろう。

「温故創新」220323 N1017伊波喜一

なめらかに 会話すること 魅力だが 内容の価値 先ずは問われん    

 昨日は雪混じりの一日となった。それにしても、寒かった。これで電力が停まれば、かなりの冷え込みとなろう。一にも早い東北の電力復旧が、待たれる。

 日本の英会話人口は、裾野が広い。熱もある。しかし、それに見合うだけの上達があるかと言われれば、そうとは言えない。

 確かに、なめらかにしゃべるのを聞くと、うらやましくなる。立て板に水で会話できれば、素敵だ。しかし、本来会話は、相手とのキャッチボール形式で進んでいく。決して、一方通行のものではない。何にもまして、話す内容こそ大切となる。

 単にゴシップを追うだけなら、早晩、話題は尽きる。なぜなら、人は存在感を求める生きものだからである。

 どんな人生観を持ち、どう生きていくのか。違う人生観を持つ人と接することで、自分のアイデンティーを深められる。

 だから、生き方そのものが問われる。良質の話題を共有するために語彙力を磨き、政治・文化・芸術面への造詣を深めていくのだ。

 英会話のバックグラウンドには、無数の政治的・宗教的・人種的土壌が横たわっている。この未知の土壌を探りながら、言葉を紡いでいく。そして、共通事項を増やしていく。

 そこに、英会話の本質があるし、醍醐味もある。会話の本質は、所詮、人と人との理解に他ならないのだ。

「温故創新」220322 N1016伊波喜一

春の日に 戦禍逃れて 国外へ 戦起こすは 天魔の所為と   

 お彼岸の昨日は、墓参りで道路がかなり混雑した。暖かい陽射しの元、適宜先祖を弔うことは大事なことである。年2回の彼岸は、過去を手繰り寄せる機会とも、未来への誓いの場ともなろう。

 一転、今朝は朝から冷たい雨が降っている。東京でも雪が降るとの予報だ。地震にあった東北では、電力供給事情がさらに厳しくなる。日本全国で電力節約を促すのは、当然の事であろう。

 ウクライナでは、ロシアの攻勢に向けて、外国人部隊への「志願兵」が世界から駆けつけている。その数、およそ2万人。家族を守るために、祖国を蹂躙されないために、命を懸けて闘う。

 そのウクライナに武器を提供して、NATOはロシアとの代理戦争を行わせている。全く錯綜した論理である。

 ウクライナを戦場に限定すれば、被害を最小限にとどめられるとでも思っているのだろうか。武力と武力の衝突から得られる教訓は1つ。憎しみの連鎖である。

 同種で殺戮を過激化するのは、人だけである。殺戮の欲求は、とどまるところを知らない。エスカレートして、大量殺戮に向かう。

 ロシアの愚かな指導者に率いられた国民は、不幸である。同様に、その被害を受けているウクライナの民も、不幸である。

 「貪・瞋・痴」という生命の無明から脱却せずして、真の平和は築けない事を痛感している。

「温故創新」220318 N1015伊波喜一

対立と 分断の国 新党首 負の共感から 未来へ向けて   

 夜半の雨で、サクランボの花びらが路上に張り付いている。一夜明けた今日は、朝から寒い。仕舞いこもうとしたコートを着る。

 韓国大統領に尹錫悦(ユンソクユル)氏が当選した。政権が5年ぶりに、進歩(革新)から保守に代わる。得票差0.73㌽の僅差での勝利だった。

 今回、文(ムン)政権のジェンダー平等に、「逆差別だ」と反対した20代の男性達の6割近くの票が集まった。反対に女性の6割近くが、進歩系の李(イ)氏に投票した。

 韓国社会は家父長制的な伝統が、社会の成り立ちに大きく影響を与えている。その分、女性の社会進出に大きな壁となった。

 しかし、男性の徴兵制度に与えられていた公務員の加算制度に違憲判決が出て、1999年に廃止された。日本でも「男女雇用均等法」が出来て、男女間の差を解消しようと試みている。

 その頃から「イクメン」が当たり前という空気が、世の中に広まってきた。これまで、女性に押し付けてきた育児や家事を、互いに協力し分担することは、とても大事な事であろう。だが、権利として互いの主張を尖らせると、その行く先に翳りを感じてしまう。

 韓国は今、男女間の待遇をめぐり、国内で揉めている。世代間でもこの議論が続くと、殺伐とした社会にならないか案じられる。日本も、韓国を他山の石とすべきであろう。

「温故創新」220317 N1014伊波喜一

地震 忘れた頃に やってくる 火山大国 防災・減災 

 昨晩午後11時36分、宮城・福島県震源地とする震度6地震があった。震源地が深く、広範囲の揺れが観測された。 

 午前5時現在でも、5万軒で停電が観測された。今回の揺れは、縦揺れよりも横揺れが激しかった。揺れは5分程度続いた。2階の窓枠が捩じられるように揺れ、これ以上続けば窓枠が壊れるのではないかと思うほどだった。原発には影響がないとのことだが、油断できない。

 南海トラフは2030年までに起こることが予見されている。この予測は、過去のデータを検証した結果、導き出されている。日本は火山帯に覆われており、噴火の跡が生々しく残っている。

 したがって、データ分析が容易である。その分、正確に予測が割り出せる。海岸地方の津波は元より、首都圏直下型などの地震は、火災を伴うため、甚大な被害が予測される。過去に起きた規模の地震でも、その被害は比較にならないぐらい大きくなろう。

 今後1週間程度の揺れの特徴を捉え、過去のデータと照らし合わせることで、今後の地震の予測に繋げられよう。家庭においても、3日分の食料や燃料などの用意が欠かせない。

 災害は忘れた頃にやってくる。(大丈夫だろう)(何とかなるだろう)という心の緩みこそ、大敵である。 

 油断は慢心と同意である。(これでいい)という緩みを引き締めて、心して対処してゆきたい。

「温故創新」220311 N1013伊波喜一

父の意志 受け継ぐ使命 自らに 後継の道 拓かんかなと 

 庭のサクランボが色づき始めた。3月上旬とは思えない暖かさで、この分では一気に花開きそうである。

 今日で東日本大震災から、丸11年目となる。環境整備が着々と整えられているが、心の復興にはまだ時間がかかる。

 喪失感を埋めるには、思い出の品や人との関わりと向き合わなくてはならない。しかしそれを成すには、勇気がいる。厳しい現実から目を逸らさず、歩み寄っていかなくてはならない。この営みほど、苦しく辛いものはない。それでも、向き合うことが必要だ。

 不慮の出来事や突然の別れに直面すると、誰しもその現実を受けとめられない。思考がまとまらず、心が乱れる。その折り合いをつけるには、それこそ時間がかかる。飛び散ったジグソーパズルを元の形に埋め合わせるように、丁寧に1枚1枚をつき合わせなければならない。 

 それは口で言うほど、生易しいものではない。しかし、現実から目を逸らしても、否定しても何も解決しない。何も生まれない。

 現実を直視するには時間がかかる。が、先ず1歩踏み出す。そこからしか、レジリエンスは生まれてこない。

 父の葬儀は、簡素だが心温まるものだった。何気ない日常での父との思い出を語る参会者の一言一言に、癒される思いがした。この現実を受けとめるには、まだまだ時間がかかる。

 死を通して父が伝えたかったことを、丁寧になぞってゆきたい。

「温故創新」220308 N1012伊波喜一

父看取る 手足さすられ 何思う 末期の姿 最後のギフト 

 乾燥した日が続いている。午前1時45分、ホームから電話があった。父が「家族を呼んでほしい」と伝えているとのことで、急ぎ駆けつけた。

 呼吸は苦しそうだが、父の意識はまだしっかりしていた。延命措置をしないというのは、父の意思であり家族の意思でもあった。95歳という年齢を考えても、胃瘻(いろう)や点滴での延命は望んでいなかった。むしろ、家族との時間を過ごせることを重点に置いた。

 一番の課題は、どのタイミングで看取りが出来るかである。自宅で看取ることも考えたが、そのためには地域医療にシフトしなくてはならない。ケアマネージャーと連携し、在宅医の確保もしなくてはならない。しかし、父の余命を考えると、そこまでの時間はとても取れない。その点、ホームでの看取りが可能だったのが幸いした。

 父は最後まで耳がよく聞こえていて、看護師や介助の方たちが声をかけると、手を挙げて合図していた。父がこれまで家族にしてくれたことに感謝の言葉を伝えると、拍手して喜びを表していた。

 そして、みんなで仲良く協力するよう、手を合わせさせた。その事を、父は一番訴えたかったのだろう。その深い意味を理解するには、まだまだ時間がかかる。

 だが、寿命が尽きようとする最後の瞬間に父が託した思いは、一人一人の心に消えない思い出として残り続けるに違いない。