「温故創新」231222 N1355 伊波喜一

目に余る 不正多発の 業界で 上司とお客 向くのはどこか       

 もみじの葉が強風で吹き飛んでいる。天候不順、全国大荒れである。

 自動車業界は、日本の輸出の稼ぎ頭である。トヨタの完全子会社であるそのダイハツ工業で、計画的で大規模な不正が指摘された。

 社外の第3者委員会の調査によると、不正は計64車種にまで拡大している。その中には、エアバッグの作動を確かめる試験での不正をはじめ、万が一の際に運転手や同乗者を守る性能に関わる不正が、多く含まれている。

 なぜ、常識で考えても分かることを、ダイハツは行ってしまったのか。第3者委員会はその背景に、収益向上のために車の開発期間を短縮するよう、経営陣が関与したことを挙げている。

 その1つは、過密な開発日程である。自動車はその快適さと同時に、安全性が問われる。動く凶器ともなりうるだけに、念には念を入れなければならない。しかし、開発期間短縮を優先するとなれば、安全性に関わる実験や改善は、後回しになってしまう。

 その2つは、認証試験担当部署の人員を大きく減らしたことである。少ない人数で大量の検査を行い、合格させるとなると、検査の手抜きや改ざんが起こるのは自明である。だからといって、その責めを現場に負わせるのは、筋違いも甚だしい。

 トヨタダイハツの経営陣が、利益主導で突き進んできた経営のあり方を直視しなければ、大きな事故を引き起こすことを懸念する。