「温故創新」231123 N1331 伊波喜一

オフロード 魅力あるかと コマーシャル 環境・人権 意識鈍化し          

 初冬の空に、雲が流れている。空気が乾燥して、鼻の奥まで乾く。

 英国の広告規制団体の「広告基準協議会(ASA)」は22日、トヨタ自動車の荷台付きスポーツタイプ多目的車(SUV)の2件の広告について、「環境への影響を無視した運転を容認している」として、英国での広告を禁止すると発表した。

 ASAは「環境への悪影響を与えているにもかかわらず、オフロード走行を奨励している」とし、「社会に対する責任が欠如している」と手厳しい。一方、トヨタ側は「映像は許可を得て、英国以外の海外の私有地で撮影しており、生態学的に影響を受けにくい環境である」と反論している。また「ポスターはCGを使っており、環境への影響はない」と訴えている。両者の言い分は、真っ向から対立している。

 確かにトヨタの言うように、環境への直接の影響は少ないかも知れない。しかし、私有地でSUVを乗り回せる人が、どれだけいるだろうか。私有地以外でオフロードを乗るとなると、環境破壊への影響は大きい。そして、コマーシャルが深層心理に訴える影響は、これまた大きい。たとえ私有地で乗れなくても、公有地で乗りたくなる。その影響の大きさを考える時、ASAが広告を禁じた意味合いが理解されることだろう。

 環境の大切さや民衆の善性は、お金には換算できない。物事の是非が通らない社会や運動は、衰退の一途を辿っていくのみである。