「温故創新」230928 N1303伊波喜一

救済法 対象外の 人々へ 水俣病と 国が認定    

 湿度が高く、気温も高い。夏が舞い戻ってきたかのような一日だ。 

 水俣病被害者救済法(特措法)に基づく救済を受けられなかったとして、128人が損害賠償を求めて訴訟を起こしていた。昨日、大阪地裁はこの128人に対して全員を水俣病と認め、国などに対して1人当たり275万円の賠償を命じた。

 水俣病が公式確認されたのが、1956年である。この間、実に67年もの日月が経過している。何ということだろう。水俣病は言うまでもなく「メチル水銀が流された不知火海の魚をたくさん食べ、水俣病特有の症状がみられる人」を指す。

 ところが、国は128人に対して、「水銀汚染を証明する昔の髪の毛やへその緒が必要」と、証明のハードルを上げてきた。これは大企業寄りの、弱い者いじめである。体の弱った原因を直視せず、訴訟が起きるまで水銀の垂れ流しを許したのは、ほかならぬ国であり、当時の自民党政権に責任がある。 

 それにしても、保証金の額が少なすぎる。垂れ流した企業の家族にこのような症状が現れたら、平静でいられるだろうか。脳をやられて言語中枢を侵され、四肢も麻痺し、骨折して亡くなる。自身のみならず、家族がそのような目に遭わされて、平気でいられるだろうか。 

 人権という言葉の奥には、顔の見える多様な人達の生き様が凝縮されていることを、決して忘れてはならない。