「温故創新」220818 N1094 伊波喜一

日本の 誇るべきは 人の手と 頭なるかな 蝶の舞いゆく   

 今朝の関東は最低気温が20℃前後と、爽やかである。庭のブルーベリーも、健気に実を生らせている。夏が瞬く間に過ぎていくようだ。

 世界的なファッションデザイナーの森英恵さんが、11日亡くなった。享年96歳。パリ・オートクチュール組合に加入を認められた、初めての東洋人である。

 故郷の島根から上京し、東京女子大学時代に終戦を迎えた。大空襲の下、ぎりぎりの日々を生き抜いたことが、その後の原動力となった。

 森さんが世界に活躍の舞台を広げたのは、ニューヨークのショーで日本の着物テイストを前面に出して、高い評価を得てからである。テキサスを拠点に世界へ発信し、本丸のパリに進出した。

 モチーフの蝶々には、日本と世界の架け橋となるようにという願いが込められている。風に揺らされているように見える蝶々だが、その力を活かして上手に舞ってゆく。風に竿ささず、さりとて流されず。そのような思いを、蝶に込めたのかも知れない。

 往年の口癖は「日本は資源が少ないが、人の手と頭が資源である。だから、もっと大事に育んでいかなければならない」であった。

 昨今の利己主義や経済主導に流されず、日本人が持っている良さを生かしていけば、活躍の舞台はいくらでもある。華やかな世界に居ながら、自身の原点を忘れずにいた森さんの笑顔が、思い出される。

 森さんのような素晴らしい日本人を、誇りに思う。