「温故創新」211012 N907 伊波喜一

貧困を 抜け出すために 教育を 自らの手で 稼ぎ出さなん     

 南アフリカで今起きている、ギャング間抗争のルポを見た。生活の基盤となるものが全くなく、糧となるのは麻薬のみ。その縄張りをめぐって、抗争が繰り広げられてきた。

 目には目をで、殺られたら殺り返す。負の連鎖で親を失い、稼ぎもなく、教育も受けられない。医療や福祉の手当てなどは、夢のまた夢である。

 だが、力と力の争いでは、根本的な解決にならない。ギャング間抗争然り、民族間闘争然り、国家間紛争然りである。

 アフガンで土地を開墾して水を引き、食物を育てることで復興を成し遂げようとした中村哲医師。自らの手で稼ぎを生み出し、働く喜びを感じてこそ、民衆の心に誇りが戻ることを先生は示してくれた。

 「衣食足りて礼節を知る」だが、先生の卓見は民衆の力を結集してモスクを造ったことだ。

 モスクでは祈りは勿論、集会や打ち合わせ、何よりも学ぶことが出来る。長く続いた戦禍で、学びから遠ざかっていたのは子どもだけではない。大人もまたその犠牲者である。

 武器の代わりに昼は手に鍬を、夜は鉛筆を持つ。こんな当たり前のことを出来ない国が、世界にはいっぱいある。

 人道支援とは、正義を振りかざすことではない。誰もの心に本来宿る宝を愛おしみ、見守ることではないだろうか。