「温故創新」210131 N653 伊波喜一

不老不死 誰もが願う ユートピア 死後の世界を 忘れ得るかな       

 真っ青の空に、ケヤキがすくっと延びている。

 その上空を、3羽のカラスが飛んでいる。上空は風があるのか、飛びにくそうだ。じきに視界から外れて、北の方へと移っていった。 

 過去200年間で、人類は平均寿命を著しく延した。

 全世界では40年未満から72年へ、一部の先進国では80年長へと跳ね上がった。

 20世紀までは、子どもの少なくとも3分の1が成人前に亡くなっていた。目下、世界全体での乳幼児死亡率は5%を下回る。

 つまり、人類は医学や科学、公衆衛生などを駆使して、ひたすら寿命を延ばしてきた。 

 その結果、私達は死後の世界を考えることを忌避し、忘れた。若さを保つための秘訣には耳を傾けるが、哲学や宗教など死後の世界を考えることに興味を失った。 

 では今回のパンデミックで、死に対する意識は変わるのだろうか。恐らく、変わらないだろう。むしろ、より効果的なワクチン開発を含めて、死を防ぐことに力を注ぐだろう。 

 しかし、生あるものは死を免れない。誰一人として。死を避けて通ることは出来ない。  

 死を考えることは、生を充実させることに他ならない。そしてその答えは、誰かが与えてくれるものではない。自ら掴み取るものなのだ。