「温故創新」240412 N1407伊波喜一

高くても 地産地消を 応援す 共助の心 自他栄えんか  

 日中は陽射しが強いものの、朝晩は肌寒い。鳥の鳴き声が喧しい。

 義父の3回忌にお供えする果物を買いに、泡瀬の青果市場に車で向かう。目当ての青バナナは手に入ったが、葉野菜が少ない。

 レタスがないか店の人に聞いたら、品切れだとのこと。1玉、380円もするというのでビックリだ。何でも中国の富裕層が買うので、値上がりしているそうだ。

 その中国の富裕層は2億人もおり、美味しい食材を求めて日本からの輸入が急増してゆく。その内、レタスが1玉500円する時がやってくるだろう。信じられないかもしれないが。

 ライカムのイオンモールには、今帰仁(なきじん)産のスイカが並んでいた。ペットボトル水は本部(もとぶ)産で、源水を利用している。うるま市のウルマルシェコーナーには、卵や野菜、ケーキなどが並べられている。値段は相応に高いが、これら地産地消型の取り組みを販売戦略として後押ししている。

 食の確保と安全性は、現役世代だけの問題ではない。継続して供給し続けなければ、現世代で途絶えてしまう。後から取り戻そうと思っても、取り返すことは出来ない。自国の民の胃袋を満足させられなければ、本末転倒である。視野を広げ、多少高くてもSDGsに関わる商品を応援していくことが、地域や国を守ることに通じる。

 共助の姿勢こそが、地場産業を支え盛り上げるのだ。

「温故創新」240403 N1406伊波喜一

東京の 都市番付が 第2位に 知識と技術 さらに活かせと  

 朝から風が強く、庭の楠の枝が大揺れしている。台湾と西表島で大きな地震があり、高さ3㍍の津波警報が出された。四方を海に囲まれている沖縄は、車社会である。避難しようにもどこも大渋滞となった。

 英不動産会社「サビルズ」が発表した23年版「危機を乗り越え成長する都市ランキング」で、東京は前回の第5位から第2五位へと躍進した。

 ランキングは世界490都市が対象で、「経済力」「知識と技術」「ESG(環境・社会・企業統治)」「不動産」の4分野で分析し、順位をつけた。東京は経済力と不動産の規模や投資額が大きく、文句なく上位をつけている。

 知識と技術では相応の力があるものの、横の連携や縦の深めが十分とは言えない。芸術や文化の質は高いものの、都心に集中しているうえにアクセスが十分ではない。時間と経済力がなければ、その恩恵に浴することは出来ない。

 これは、教育についても同様である。その立地と文化的背景と蓄積に加えて経済的基盤があってこそ、東京の価値は高い。国内の他の都市では、とてもこうはいかない。

 人口の過密と多忙感、消費型の生活スタイルが根強い東京は、SDGsのような満足度が高いとは言い難い。危機を乗り越えるという重い命題に応えるには、根本的な変化が必要であろう。

「温故創新」240314 N1404伊波喜一

少年の 夢を育み 指し示す 巨匠の描く 世界に浸る  

 サクランボの花が、五分咲きである。暮れにかなり枝を落としたのでどうかと案じていただけに、白い花弁が目に優しく映る。

 宮崎駿監督の映画「君たちはどう生きるか」が、第96回アカデミー賞の長編アニメーション賞を獲得した。

 戦時下で母親を火事で亡くした少年眞人が、黄泉の世界の母親を捜しに行く。そこは甘美な世界であり、留まりたい誘惑に駆られる。しかし、眞人は現実の世界で共に生きていく道を選択する。

 理想郷と異なり、現実は複雑で不明で混沌としている。少年の知恵では、窺い知れない深い闇が存在する。しかし、先が見通せない分、少年は自分の考えで突っ走ることが出来る。たとえそれが大人の敷いたレールから外れようとも、若さゆえの挑戦には意味がある。

 眞人の生き方は一見、無鉄砲に見える。計画的ではなく、行き当たりばったりの感がある。確かに自ら考え、考えの通りに突き進むことは決して簡単な事ではない。現実の苦しさから逃避する方が、生き易いと感じてしまう。

 そんな時に、敢えて困難の道を選択するには、余程の覚悟が無くては出来ないことだ。その積み重ねが、結果として自分らしく生きることに通じていく。

「この世は生きるに値する」と、かつて宮崎監督は少年達に語った。苦しい現実に喘ぎながらも、一歩踏み出す勇気を下支えしてゆきたい。

「温故創新」240308 N1403伊波喜一

父逝きて はや3回忌 早足に 春雪残りて 墓参出来ずか  

 降り積もった雪が、雨に打たれている。軟雪でもう溶け始めている。

 父の3回忌の今日、姉と上さんの3人で父の墓参を予定していた。が、今朝方まで降り積もった雪が思った以上に深く、断念した。

 筆まめな父は、筆者の学生時代、毎週のように手紙を送ってきた。社会人になっても隔週、送ってきていた。手元にあるこの手紙は正確な日付が分からないが、平成元年頃と思われれる。

 戦前の軍国主義時代に青春を送った父は、バブル崩壊後の長い不況のトンネルに差しかかる時代の雰囲気を危惧していた。一言すると、一強・上位下達主義である。愚かにも、大手企業に都合の良い派遣社員制度が導入され、官民挙げて自己責任論を支持した。
 その結果、グローバリゼンーションへと傾斜し、弱肉強食が公認されたも同様となった。そのような風潮に、父は統制されていた軍国主義時代の匂いを感じ取ったようだった。

「戦争はあらゆる矛盾を破壊する一手段であり、敗戦が日本に自由をもたらした。だが自由を得るための代償は、あまりにも大きかった。だから、是が非でもこれ(自由)だけは守り抜かなくてはならない」。

 日記にはそう書かれている。勇ましい全体主義や軍靴の響きは、初めは気にも留めないぐらいの静けさで近寄ってくる。足音に気づいた時には、もうがんじがらめにされてしまっている。

 世界の状況は当時より悪くなっている。注視すべき時である。

「温故創新」240306 N1402伊波喜一

国民の 胃袋満たす 政策を 軍拡愚か 共存存続

 昨夜の雪が、小雨に打たれて溶け始めている。凍らないようだ。

 5日北京で、中国全人代が開幕した。李強首相は「政府活動報告」で、2024年の経済成長目標を5%前後に設定した。ゼロコロナ政策の失政で、経済活動や不動産不況が尾を引いた格好だ。

 23年の海外からの直接投資は、前年比82%減の330億ドル(約5兆円)となり、外資離れが顕在化した。李首相は「国家安全保障と社会の安定を守る」と、経済発展より国家安全を重視しているが、「改正スパイ法」の実行を警戒する外資の不安を、解消できない。

 一方、国防費は前年比7.2%増で、約34兆8千億円となった。実質経済成長率の約2倍である。軍拡路線を驀進中であり、国民生活に相当の負担を強いることになろう。

 社会保障費は、前年比3.12%増となる約135兆円を計上した。これは11年度の2.8倍であり、今後さらに増加することが確実視されている。中国国家統計局によると、23年の65歳以上の高齢者数は2億1676万人と、全人口の15.4%を占める。35年には21%に達する。高齢化社会日本の後追いをする格好だ。

 日本と異なるのは、年金制度と国民健康保険制度が、十分に整っていないことだ。加えて、広大な国土と人口を抱えている。インフラ整備や公共施設の維持管理に要する費用は、比べようもない。

 中国共産党の舵取りは、極めて難しい局面に立たされている。

「温故創新」240302 N1401伊波喜一

懐かしさ 思い出手繰る 30年 元気な姿 昔が今に

 サクランボの芽が、まあるく膨らんでいる。明日は雛祭りである。

 グアム時代の友人と、30年ぶりに再会した。浜松市から車で片道5時間半もかけて、わざわざ上京してくれた。

 彼女は米国に住んでいた。国際結婚して彼の母国日本へ移り住んだ。日本語は話せるし理解も出来るが、読み書きは英語が断然勝る。そのため、日本語の微妙なニュアンスが分からない。

 米国では、個人の意思が最大限に尊重される。同様に、意見は誰にも忖度せず堂々と言うのが普通だ。ところが、日本はその真逆である。慣習や習慣に戸惑う事が多く、ストレスが溜まってゆく。

 結婚を祝いながら、この30年の来し方を聞かせてもらった。米国は自由な反面、自己責任が徹底した国だ。自由は自ら勝ち取るものであり、与えられるものではない。それだけ生存競争が厳しい。

 日本はそこまではいかない。が、煩わしい人間関係を避けて生きることは出来ない。これらの文化の違いは、互いの国の奥底を通奏低音のように貫き、思わぬところでパートナーとぶつかる。

 外国で暮らすのは、並大抵のことではない。先ず語学が堪能でないと、仕事が得られない。仕事を得ても、この文化の違いを習得し、我が身に刷り込まなければ、やがて行き詰まる。アイデンティーは文化の表層を撫でたぐらいでは、到底確立できるものではない。

 日本文化への友の適応と活躍を、祈る思いで別れた。

「温故創新」240227 N1400伊波喜一

米支援 目立つ遅れに NATOが 横暴ロシア 悪見過ごさぬ

 風が冷たい。木々が幹から揺れて、梅の花を吹き散らしてしまった。それにしても、2日間にまたがって突風が止まないのは珍しい。

 ロシアの侵攻から2年が経った。ゼレンスキー大統領は、この2年間のウクライナ兵の死者数を「3万1千人」と公表した。ロシアの愚かな侵略により、有為な人材が失われたことを憤る。大統領は「一人ひとりの犠牲者が、我々にとっては甚大な意味を持つ」と語った。

 最大の支持国である米国は、共和党ウクライナ支援に反対しており、自国内にお金を使うべきだとしている。またトランプ氏は「ウクライナ支援をしても戦況は変わらず、お金のムダ」と言い放っている。 

 そんな中、スウェーデン北大西洋条約(NATO)加盟が、26日決まった。先行したフィンランドと合わせて、NATOは32カ国体制となる。スウェーデンのクリステション首相は「歴史的な日だ。欧州と大西洋の安全保障は、責任を負う用意がある」とした。

 これでNATOは、欧州北部のバルト海をほぼ囲む形となった。ロシアにとっては、同海に面する飛び地カリーニングランドからの軍事展開が難しくなる。NATO拡大を警戒してウクライナに侵攻したことが、完全に裏目に出た格好である。

 「お金のムダ」と言い切る共和党には、人道も子どもの命も眼中にない。その傲慢が、明日は我が身に降りかかってくることに、気づいていないことが怖ろしい。米国の凋落ぶりが何とも哀れに映る。