「温故創新」210331 N712 伊波喜一

フレイルの 危険高まる コロナ下で 適度な運動 人との関わり

  日中は蒸すが、朝晩は凌ぎやすい。例年より初夏の到来が早いのだろうか。汗ばむ陽気だ。 

 コロナ下の外出制限で、高齢者の身体機能や認知能力が低下し、フレイルの懸念が深まっている。

 フレイルとは虚弱のことで、要介護の一歩手前の状態を指す。世界中でその傾向が広がっている。 

 英バーミンガム大の研究チームは、12カ国でコロナ患者5700人を調査した。その結果、深刻なフレイル状態の患者はそうでない患者に比べ、死亡率が3倍高かったとする調査結果を発表した。 

 フレイルの診断基準は概ね、次の5項目。体重減少、疲労感、歩行速度低下、筋力低下(握力)、身体活動低下。このうち、3つ以上当てはまると該当する。 

 ノルウェーでは基礎疾患のあるフレイル状態の高齢者が、米ファイザー製ワクチン接種後に死亡する例が30例近くあった。身体機能の衰えが、ワクチン接種に耐えられなかったと考えられる。 

 厚労省は予防のポイントして、十分な栄養補給、運動、社会参加を挙げている。

 社会参加というと大仰な感じを受けるが、社会参加の基本は社会の出来事に関心を持ち、物事や人と関わることである。

 社会と関わることで身体能力を維持できるのは、道理である。

「温故創新」210330 N711 伊波喜一

知恵絞り 古都の景観 守りゆく 京町屋の 存続如何に

  曇天が広がっている。室内にいると涼しく感じるが、動くと蒸す。サイクリングにはもってこいの季節だ。 

 京都の伝統的な木造家屋「京町屋」が、減少を続けている。老朽化や所有者の高齢化、高い維持費などを理由に、取り壊されることが多くなっている。 

 京町屋は、建築基準法が施行された1950年以前に建てられたものが多い。そのため、間口が狭く長い奥行きが一般的である。その造りから「うなぎの寝床」とも、呼ばれている。

 土で塗り固めた「虫籠窓(むしこまど)」や、内側から見えやすく外からは見えにくい「京格子」が特徴である。京都市によると、2016年時点で京町屋は市内に4万軒あったが、15%減少している。 

 土地や建物の維持は簡単ではない。修理・補修が欠かせないのは元より、無人化した場合のメンテも負担が大きい。加えて、借地権が発生している場合は、貸し手と借り手の思惑が交差し、補修や処分が簡単ではない。

 処分するにしても、これまた時間がかかる。

 特に街並み保存などに該当する場合、不動産はまさに手入れも壊しも出来ないものになってしまう。 

 国と自治体は長期戦略を立て、保存のプロセスを示す時が来ているのではないだろうか。

「温故創新」210329 N710 伊波喜一

海氷下 自動航行 調査ロボ 南極海で 氷のナゾに

  目に青葉が眩しい。今朝は微風・晴天で、昨日の大雨・大風がうそのようだ。それにしても、草花の開花が早い。5月の花まで、季節を先取りして咲いている。一体、どうしたことだろう。 

 南極の氷は、気候変動に大きな影響を与えている。しかし、その量がどれぐらいあるのか分かっていない。

 そこで、船舶では入れない氷の下に潜って、自動で観測する自立型海中ロボット(AUV)を東京大と国立極地研究所が開発した。

 北海道・紋別港での実験に成功し、22年度から昭和基地周辺の南極海で調査を開始する。 

 南極の氷は、地球上の淡水を蓄える貯蔵庫の役割を果たしている。その正確な量は、航空機や人工衛星など上空からの観測だけでは不十分である。

 そこで、海氷や陸地から張り出した棚氷の下に潜り、裏側の形状や海水温を測定する必要があった。AUVは超音波センサーなどを使い、障害物を避けながら自動で調査を続けることが出来る。 

 研究予算の少ない日本だが、目の付けどころではこのような成果が挙げられる。ニッチな分野に目を向けたことで、研究の進度が加速してゆくだろう。

 研究成果は、促成栽培のようにはいかない。試行錯誤を奨励するぐらいの懐の広さが、国には求められる。

「温故創新」210328 N709 伊波喜一

メキシコで 大麻合法 カルテルを 潰す目的 議論百出

 吉祥寺の井の頭公園は、桜が満開である。緊急事態宣言も解除になり、多くの人が繰り出している。

 人は一時の緊張には耐えられるが、長すぎる緊張には耐えようもない。弛緩を求める。それが人の心理というものでは、なかろうか。

 といっても予防策を講じなければ、コロナはすぐに蔓延する。

 場当たり的な対応ではなく、いつまでどのように過ごすのか。緊張と弛緩の塩梅を示してゆくことが、これからは特に求められよう。 

 メキシコでは近く、娯楽目的での大麻使用が合法化される見通しとなった。06年に当時のカルデロン政権は、軍を派遣してカルテル壊滅作戦を行った。

 「戦争」は10年以上続いたが、カルテルはより武装化し、順軍事組織化した。結果、25万人以上の死者を出した。 

 統計によると06~19年で、14万人以上の失踪事件が報告されている。誘拐されて、麻薬の密造や密売に関与させられているのではないか、疑われる。 

 法案では大麻を合法化することで価格が下がり、闇市場が縮小し、カルテルを抑え込めるとしている。

 しかし大麻に手を染めれば、より強い刺激を求めて、中毒性のある覚醒剤や麻薬に手を染めてゆくのは、火を見るより明らかである。

 WHOの積極的関与を、各国が支持してゆくべきであろう。

「温故創新」210327 N708 伊波喜一

男女比を 同数にして 議論する 数の是正は 組織の要            

 日中の陽射しが肌に痛い。体が慣れていないので、暑さにへばる。そんな中、道端の雑草は元気である。暑さにも寒さにもへこたれず、我が道を歩んでいる。 

 通信大手LINEの情報流出が、波紋を広げている。国内で8600万人が利用し、グローバル展開を広げているだけに、組織のあり方に関心が集まっている。 

 日本に限らず、社会はまだまだ男性中心である。

 確かに、出産や育児に関わることは、どうしても女性に比重がかかる。保育園などを完備しても、相手は小さな子どもである。病気や怪我、気持ちの不安定など、次から次へと色々な事が起こる。 

 現代のイクメン達はその点、子どもの送り迎えや家事の分担など、よくやっていると実感する。若者のトレンドが、良い方向へと向かっている。 

 残念なのは、男性の育休や時短休暇などの普及率の低さだ。正規職員・非正規職員という立て分けがあるように、働き方と収入は大きく関連している。その主体を、長く男性が占めてきた。 

 働き方改革はいまだ仕事に限定した考え方だ。育児・家事・介護など、社会を成り立たせている要因は、男女を問わず皆で協力していかなくてはならない。

 女性目線での提言が、欠かせない。

「温故創新」210326 N707 伊波喜一

コロナ下で 地域おこし 隊員が 全国各地 5464            

 桜前線が北上している。わずかの風に揺れながら、今を盛りに咲き薫っている。今週末は、東京でも見頃だろう。 

 2020年に活動した「地域おこし協力隊員」が5464人になったと、総務省が発表した。前年度より115人増えた。隊員は地域のPRや特産品の開発などに従事する。 

 隊員を受け入れたのは、1065自治体にのぼる。20年度の隊員は30代が31%、30代が36%と、若い世代が占めた。全体の40%が女性だった。

 都道府県別の赴任先は、北海道が699人、長野416人、高知220人、新潟213人と続く。

 任期終了後も赴任先か近隣自治体に住んでいるのは、20年3月末時点で4114人となった。 

 赴任先に住み続けている元隊員の38%が起業し、カフェなどを営んでいる。中には、後継者不足の酒造や民宿などを受け継ぐ例もある。 

 農家の担い手も激減しており、せっかくの農地が放置される例が多い。自治体によっては農業従事者を確保するために、農地の転売を固く禁じているところもある。

 しかし、有効利用するためには制限を取り払うことだ。

 選択の幅を広げ、やる気のある人が自由に参加出来る仕組みを作っていくことが、求められる。

「温故創新」210325 N706 伊波喜一

先駆けて 気持ち明るく する桜 時を知りたる リズム忘れず            

 早稲田通り公園の桜が満開である。ついこの前までは蕾が開き始めたばかりだったが、いつの間にこんなに開花したのだろう。

 大雨や大風に耐え、万朶の花を咲かせている。 

 桜は大木だが案外、病害虫に弱い。大樹に育て上げるには、工夫がいる。その工夫として、桜の樹皮に苔を生やさせないことがある。表面に苔が生えると、生命力が衰える。 

 桜は根っこで呼吸するので、根元の手入れを怠らないことも大事だ。

 また伐ってもすぐに生えてくるが、伸び先が塞がれると新しい枝が十分に伸びていかない。だから、伸びる道筋をつけておくことが欠かせない。 

 以前、庭師が伐っているのを見たが、伐ればいいと思うのは残し、ちょこんと枝を落としているだけにしか見えなかった。

 今考えると、枝が伸びる先を見据えて伐らなかったに違いない。同時に、新枝の伸びていく道を防ぐ枝は、たとえ少量であろうと伐ったのだ。 

 南は沖縄から、東京、東北、そして北海道と桜は北上している。

 環境が整ったから、咲くのではない。雨風や気圧という逆風に向かって歩みを止めないから、桜前線というのだ。

 人も同じ。多少の困難は想定済みである。桜の勢いに負けることなく自らの心に挑戦してゆきたい。