「温故創新」200310 N396 伊波喜一

歳月の 過ぎる早さに 驚きぬ 大震災の 記憶たどりて

 11日で東日本大震災より丸9年が経つ。国や県、住民やボランティアの力で、防災への取り組みや建物の復興は確実に進んでいる。震災後2年を供与期間として、岩手、宮城、福島3県ではプレハブ応急仮設住宅を建てた。仮設住宅には11万5906人が入居していた。ただし災害公営住宅整備の遅れもあり、延長を重ねてきた。現在、入居者は709人となっているが、移転先が決まっていない居住者が残っている。当時よりさらに高齢化が進み、移転先の確保が難しいと思われる。経済面や健康面、何よりも精神面での健康が懸念される。親しい友人もいない中で、知らないところで生活するのは難しい。 私達は「世間」に生きている。世間に守られて育っている。時には煩わしく感じることもあるが、煩わしさゆえに世間を飛び出さずに生きている。その有り難みになかなか気づけない。 

 大震災は国土を寸断した。地域という世間も分断された。失ってみて初めて、世間の何気ない有り難さに気づいた。失うのは一瞬、築くのは至難。大震災の傷跡はあまりにも大きい。でも築かなくてはならない。世間を築き直すことは自分を取り戻すことなのだから。