「温故創新」240210 N1391伊波喜一

東洋と 世界をつなぐ 指揮棒で 謙虚な学び 普遍な個性 

 モッコウバラの芽が赤くなっている。春を待ちきれずにいるようだ。

 小澤を語るエピソードに共通するのは、努力家で意志が強い反面、小さき者や弱き者に対する情の深さであろうか。ともかく魅力的だ。 

  その語録からいくつか紹介する。「クラシックの発祥は西洋だけど、世界中誰もが平等の素晴らしさを享受できる。そこがクラシックの良さだ。実力がある人が切磋琢磨して生み出した音楽が、共通語として世界をつなぐ。世界的なオーケストラとの音楽を通じて、ぼくは理想的な民主主義のあり方を経験させてもらった気がする」。

 「音楽は緻密な芸術で、そこには厳格さがある。僕らはそれを基礎と呼んでいるが、それがなければ危険なことだ」。

 「戦後70年かけて『日本人は勤勉で、真面目で、信用できる』という国際的な評価を得た。この信用を元に、若い世代を育てなくちゃいけない」。その後2000年「小澤征爾音楽塾」、2005年スイスに「国際アカデミー」を設立する。   

 「斎藤先生からは緻密な指揮法を学んだが、今も僕にはそれがない。僕はこうあるべきだというのを決めず、その場で耳で聴いて教える方がいいんじゃないかと思っている。それでも、時々思う。もし、斎藤先生が僕の代わりにここにいたら、どういう風に教えるのかなって」。

 師匠の指導を尊敬し尊重しつつも、自分の個性を曲げてまで合わせることはしない。小澤らしいバランス感覚だと思う。                      

                                  合掌